私が『あおいよるのゆめ』を制作していた時、まず、いかにシンプルかを追求しました。シンプルで、すぐに伝わる本を作りたいと思ったのです。世界を変えたり、インパクトを与えたり、騒々しい「大きなこと」を伝えるストーリーではなく、それどころか、花がさく美しさや、星が輝く素晴らしさ、子どもたちが眠るために目を瞑る詩など、よく見ると見えるような「小さなこと」を伝えたかったのです。
つまり、表現したかったのは、「小さなこと」の奇跡です。このことは、本の中でずっと守られていて、私がこのシリーズの全てのタイトルで強く願っている大切な要素です。なぜなら、もし子どもが「小さなこと」を享受することを学んだら、大人になった時に「大きなこと」にどう直面すればいいか知ることができるからです。
もちろん、この「シンプルさ」の裏には、仕掛けの設計段階では、たくさんの研究やCoccinella(『あおいよるのゆめ』の本国の出版社)がこれまでに直面したプロセスを必要とする複雑な作業があります。大きな挑戦でしたが、しかしそれ以上に、全てのことにおいて「シンプルさには、常に大変な努力が必要」ということを体感しました。
どうやって『あおいよるのゆめ』のインスピレーションを受けたか覚えています。私は本の中心である、創造性を育むための核心、つまり、「シンプルさ」を探していました。子どもたちには、私たちの周りの世界について、というより、物事との関わりについて伝えたいと思っていました。より具体的にいうと、私たちの住む世界に、私たちがどう影響できるのか、ということを表現することに興味があったのです。
そのことについて試行錯誤していたある日、バス停でベビーカーを引いた女性に遭遇しました。ベビーカーの中には、生まれて数ヶ月の赤ちゃんがいたのですが、私を見て、微笑んだ後、小さな子どもがよくするように、そのまま目を閉じてすぐ眠りに落ちました。私が待ち続けていたものがそこにありました。私たちの周りの世界を変える力のある、小さくて奇跡的な出来事です。それを、本の中で小さなカーソルに割り当てようと思いました。私は『あおいよるのゆめ』の核心を見つけたのでした。
ワールドライブラリーを代表する絵本となった『あおいよるのゆめ』の出版社ブースにて作者ガブリエレ・クリーマさんと今年もお会いできました!今年は『あおいよるのゆめ』10周年の年、日本で10周年企画を準備していると伝えると大変喜んでくれました。さらに持ち込んだ絵本とサインペンを取り出しサイン本をお願いしたら快く応じてくれました。貴重なサイン本、我が社の宝物にします!
作家兼イラストレーター。イタリア国内外で有名な作家であり、幼児向けから若者向けのフィクションまで多くの本を出版している。
国内のみならず、海外の賞も多数受賞。
2017年 小説"Il sole fra le dita"がイタリア・アンデルセン賞(Premio Andersen)受賞、同年にIBBYバリアフリー児童図書に選出。2018年 "La Stanza del Lupo"がストレーガ・ラガッツェ・エ・ラガッツィ賞ノミネート。2020年 "Black Boys"がミュンヘン国際児童図書館の『ホワイト・レイブンズ』に選出。2021年 "La Stanza del Lupo"が、ベネズエラの非営利団体バンコ・デル・リブロが推薦する優良図書(The best book for children)に選出。2022年 "Fiori di Kabul"がバンカレリーノ賞ノミネート。
また、2020年には、彼の小説は、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州の学校の10年生(日本でいう高校1年生)の最終試験で必読書となった。